* ニュースダイジェスト社/月刊生産財マーケティング'98年5月号の記事より抜粋しております。
ハーモニック・ドライブ・システムズ
本社は東京・品川区大井。 工場は長野県南安曇郡穂高町に構える。 北アルプスを望む大自然につつまれた約70,000平方メートルの広大な土地で、注目のハーモニックドライブという精密な制御減速機を生産している。
社名と製品名が同一のために両方ともに覚えやすい。 しかも「ハーモニックドライブ」という減速機の基本部品点数がわずか3点で構成されているシンプル機構が、また判りやすくていい。 数十年前「シンプル・イズ・ビューティフル」という流行言葉があったが、この製品はまさに「シンプル・イズ・メカニズム」
このシンプルな機構は、シンプルなだけにモノ真似は簡単じゃない。 特許で固められているが、そのノウハウは独自の加工方法や専用治具の開発、熟練者によるNC加工技術など”高度周辺技術”が揃っていなければ製品化は難しい。
例えば、現在最も小径のハーモニックドライブの3点部品のひとつフレク・スプライン(材料ニッケルクロームモリブデン、モジュール0.084mm)は、無垢の材料から機械加工を行っている。 材料の熱処理後 → 旋盤による粗削り・仕上げ → ホブ盤での歯車加工を行い、最終仕上げはリング外周の場合、厚さ86ミクロンまで削る。 紙の厚さほどに薄く軽くなるまで削り、歯を立てる。 これをつかむ専用治具の開発と熟練技術者によるNC専用工作機械での加工技術なくしてつくれない。 この”離れ技”ともいえる技術が伴わなければ高精度を要求される製品づくりは出来ない。
この魅惑の減速機を生産する同社伊藤光昌社長は「われわれはラッキーだった。 米国で生まれた革命的な発明との出合が出発点だが、以来30数年、不動の技術である基本原理を基に日本や世界のユーザーの方々と開発段階から一緒にアプリケーションを開発し、多品種少量のハーモニックドライブを生産、提供してきました。 お陰様で今日では他の追従を許さない独創の制御技術を構築することができました。 今、これ以上の製品があるかといえば、この世にはないでしょう。 ただし、このすばらしい製品も理想的なものでないと考えます。 より優れた制御機器づくりをわれわれは続けなければなりません。」と目を細める。
特徴ある減速機のため対象市場は多種多様に広がりを持っている。
宇宙衛星から産業用ロボットまで高精度減速機を求める産業にとってハーモニックドライブは欠かせない。
同社売上高構成比(97年12月期)はハーモニックドライブの減速装置が約67%,残りアクチュエータ、偏平・中空ACサーボアクチュエータ、精密小型リニアアクチュエータ、ナノメータステージ、 光学スキャナーなどメカトロニクス製品が34%を占めている。
同社は、トレーサビリティを経営の重要課題にしている。 製品の重要性から部品の一点一点に認識番号をつけて管理しているもので、誰が、どの機械で、どんな加工条件で、そしてどんな環境下で作ったか。 日管理をして全ての部品に「認識番号」制を取っている。 万が一の事故に対して製品 → 加工 → 測定 → 加工担当者 → 材料と、生まれる時点まで遡って確認がとれ、責任の箇所を明確化している。 また将来は、製品は部品材料の手当から最終の仕上げまで、1人の人が責任を持って最終加工まで行う「1人1部品加工」生産体制を検討している。 それが「認識番号」制である。
同工場は1995年に「ISO9001」をドイツの認証機関テュフプロダクトサービスから取得、今年3月は環境「ISO14001」も認証取得した。
製品開発では、@ハーモニックドライブ用の長寿命グリースの開発AアキュドライブAタイプの販売価格50%を目標にしたCタイプサーボモータ用減速機の開発 B超高推力リニアアクチュエータの開発 C小型・低価格の新型アクチュエータエコノドライブの開発などだ。 これを重点目標に、より小型軽量で高精度、高トルク容量の機構の開発を追求している。 研究開発の要員は、現在24名。 97年度は4億5,300万円の研究開発費を投入している。
生産拠点の拡充は、今年末までにドイツで生産工場を立ちあげ、欧州と東欧諸国まで市場の拡大を狙っている。 また、国内においては、生産能力の効率化と更新需要を目的に各種工作機械の設備投資を約3億2,700万円、自動倉庫の合理化で6,900万円、能力増強と更新需要を目的に切削工具と試験用器具を1億2,700万円、コンピュータ及びソフト開発で2億4,300万円をそれぞれ計上、一部スタートしている。
株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
本 社 : 東京都品川区南大井6-25-3 ビリーブ大森
代表者 : 伊藤光昌氏
年 商 : 87億1,695万円(97年3月期)
従業員数 : 274名